阿弥陀南稜

期日:4月7日 〜 4月8日

参加者:カトCL、グッチー、たかたか、さぶ(記)

<記録>
4/7:7:20新宿BT-(高速バス)-10:45中央道小淵沢-(タクシー)10:50船山十字路-11:40旭小屋-14:30立場山-青ナギ-無名峰-16:30幕営
4/8:5:30起床-7:45幕営地-8:00P1-8:25 P2-9:35P3基部-12:00P3頂上-13:00阿弥陀頂上-13:45中岳手前のコル-行者小屋-南沢-美濃戸山荘-(車)-17:00美濃戸登山口-帰京
          
 

さぶ

いつか石尊稜をリベンジしたい!虎視眈々とそれを狙っている私は、ステップアップ山行として笹田さん、カトCLに阿弥陀北稜にいきたいと打診。
笹田さんより、岩の登攀はないが、北稜よりロングコースになる南稜は如何と提案を受ける。
それは是非、行ってみたいと、こんな事に端を発した山行。いつも、快くつきあってくれる諸先輩方に感謝。
が、残念ながら、笹田隊長より体調不良による不参加の連絡。しかし、このメンバーで十分こなせるから決行せよとのお達し。
さすがに動揺をかくせない4人は、リーダーのカトCLとメンバーのグッチーさん、たかたかと集会後に山行の再検討。

カトCLからルートの概要。そして、笹田さん抜きで、自分がリーダーという事に、不安に感じるなら、別の山に行こうと提案あり。
私は、カトCLをリーダーとして信じている。
カトCLが私たちメンバーで不安というなら中止にしたい。
だが、そうではないなら行ってみたい。と伝える。
4人で話合い、まずは、行ってみて、雪や天候の状態を見て危険だと判断したら引き返すという条件つきで決行!!

7:20 新宿に集合。たかひでさんが、見送りにきてくれる。大事な奥方たかさんを心配そうに送り出す姿が印象的。
絶対に無事に帰ってきますと、出発。渋滞もなく、順調に中央道小淵沢BTに到着。
カトCLが手配してくらたタクシーに乗り込み船山十字路へ。
林道は凍結しているのに、タクシーは、まさかの普通タイヤ。
ツルツルすべりながらの巧みな地元運転手さんのドラテクに身をあずけつつ、ここでたかたかからカトCLへ衝撃の告白。
「実は数日前から風邪を引いていて体調がイマイチ」とのこと。
カトCL、とりあえず、船山十字路にて、タクシーを待たせ、救急セットから体温計を取り出す
(救急セットに体温計って入ってるものなのか!!)
36.6度、本人に今は体調は問題ないとのことを聞き、タクシーを帰す(もし熱が高ければ彼女を帰宅させる手はずはカトCLの段取り)
とりあえずテン場まで行き、明朝、再度、熱を測り、アタックを決めると事になる。
グッチーさん、たかたか、さぶ、カトCLの順に歩いていく。
時折小雪がちらつくものの、おおむね天候は穏やか、気温が低いが、風がないので寒さは感じない。
トレースはばっちり、旭小屋を超えて尾根をめざす。
小さな阿弥陀岳とかかれた道標で南稜にあがり、ひたすら樹林帯の中をあがる。4月の雪はしっかりとしまっていて、歩きやすい。
まっすぐ天に伸びるような尾根をひたすら高度を上げつつ登る。私は登りが好きなのでルンルンだ。
たかたかの足取りもしっかりしており、体調不良を感じさせない。ただいつもより口数が少ないので、
やはり本調子ではないのか少し気になる。
立場山を越えて、青ナギと呼ばれるコルに出ると八ヶ岳の山々が一望できる。すばらしい景色。
当初の予定では青ナギ付近で幕営と思っていたのだが、笹田さんより事前のメールでP1近くに1張、はれるスペースがあると。
次の日の行動のために出来るだけ距離を稼ぐべく、無名峰を越え、P1手前にスペースを発見。
この時、16時半。地形図を見ると、P1を越えるとよい平地があるが、タイムアップということでここで幕営を決める。
この日、ほかのパーティーには一切あわず。非常に静かな山を堪能。
テント内では、まずは入山祝いに、最近定番化しているさぶのホットワインで乾杯。あいかわらず軽量化をしないでごめんなさい。。。
ビールをあきらめたのが私の良心だと言い張る。(よい子は真似をしてはいけない)
その後、たかたかからは梅酒と、生ハムをチーズで巻いたおしゃれツマミ、そして、メインの軽量化ハッシュドビーフは極旨!!
なんと総重量700グラムという。フランスパンにつけていただく。
ここで、携帯を見るとばっちり、電波が入るではないか。
笹田親分に写メール&生電話。激励の言葉を頂き、教え子一同でよい報告が出来る様に意気が上がる。
とにかく尾根ぞいで岩にぶつかれば、左に巻くという事を地形図で再確認し、20時に就寝。

立場山山頂。さあ、幕営地まであと少し!! 青ナギをゆく。八ヶ岳の山々が美しいです。


5時半起床。外を覗く。
東から朝日があがってきており、西を満月が沈もうしている。
無風。快晴。ベストコンディション。sa山さんごめんね。ありがとう(笑
今日登る阿弥陀の白い姿。そして、核心部であるP3と思われる岩峰がその前に立ちはだかる、軽く武者ぶるい。

朝、たかたかの検温。37度。微熱。本人曰く、体調はよく、風邪の症状はないとのこと。
カトCL、一瞬、判断に顔を曇らすが、本人の意思もあり、アタック決行する。

朝ごはんはラーメンで腹を満たし、テント撤収ののち出発。
まずはすぐにP1が目の前に。
これを予定どおり左に巻く。朝、単独の男性の先行者がいたおかげで踏み後は明瞭。
すばらしい景色。富士山もばっちり見える。
P1を越えたコルでコンテのセット。システムはヒマコン2。
オーダーは先日と一緒。
P1を振り返って。青空が美しい。。。 これからゆくP3。の、登れるのかな。。

ここからコンテで行きます!

先頭を行く、グッチーさんの足取りは軽やかかつ、よどみない。
しかしなれない私は、コンテで歩くのは中々難しい。ロープをひっかけないように慎重に歩く。
時折、危ないと思われるトラバースや斜面は、先行のグッチーさんや、カトCLが
肩がらみでビレイをしてくれる。
斜面は、心配したアイスバーンにはなっていない、雪は若干くさっている部分もあるが、
おおむね、アイゼンが効く。急斜面では、キックステップが有効。
ちょっといやらしいトラバースをして、いよいよP3の基部につく。
カトCL事前調査で基部にはワイヤーがあり、ビレイ点として使えるということだったが
雪に埋もれてビレイを取れる場所がない。
基部は下がばっさりしたが切れ落ちている。斜度50度の雪の滑り台。
各々、ピッケルを雪に打ち込み、足元の雪を踏み固めてテラスを作り、自己ビレイ。
ここで後続の2人連れが現れる。
フリーで行くとのことで、先に道を譲る。

我が隊は、カトCLがリード、グッチーさんビレイ。ビレイシステムはビナに半マスト。ビレイ点は同じくピッケル。
カトCLは片手にバイル、片手にピッケルを持ちするすると斜面を登っていく。
カトCLのリード。美しいフォームで登っていきます!

一度、岩でビレイ点を確保しようと思ったらしいが(これも事前調査でボルトや
ワイヤーがあると知っていたとのこと)雪が多く取れるような状態ではなかったらしい。

50メートルのロープが一杯になりそうな所で、ルート中央付近の潅木にてロープをフィックス、補助で肩がらみ。
2番手はたかたか。問題なくするすると登る。全くよどみない。スーパールーキーぶりを下から見守る。
1ピッチ目のスーパールーキーたかたか

3番手は私。プルージックを左手で上げて、右手はピッケルのピック部分を雪に打ち込む。
一気に50メートル近く登る訳だが、途中、息があがり、アイゼンの前歯を雪に打ち込んだふくらはぎが鈍く軋む。
なんとかカトCLの足元に到着し、セルフをとる。続いてグッチーさん、もちろん、難なくあがってくる。
1P目。しんがりを務めるぐっちーさん。

2ピッチ目も同じくカトCLリード。
30メートルほど直上し、立ち木に1ピッチ目と同じようにフィックス&肩がらみ。
3ピッチ目はコンテで行っているパーティーもあったが先ほどと同じシステムで登る。
トラバース気味の箇所では後続パーティーとラインがかぶりしばし後続パーティーが抜けるまで待つ。
青空をバックにビレイしているカトCLが印象的だった。リードありがとうございました!
3P目のたかたか。完全防備すぎて、誰だわかりません!(笑 同じくさぶ。笑ってと言われたけど、結構一杯、一杯でした。


ここからは念のため、コンテで行こうということになりP4を越える。
P4は短いが中々の急斜面。のぼり切ったところで、ここで、さぶ、軽く息切れとめまい。
燃料切れを申し出て、行動食を口にさせてもらう。
時計を見ると13時近い、朝から何も食べずにここまで来たせいなのか、ただの体力不足か。
しばし休憩ののち、P5があると思っていたら(やっぱりあったらしい)気がつかないうちに、すぐに阿弥陀の頂上へ出る。

え!!?ついたの???ここ?本当に頂上???確かにここより高い場所はない。
思わず、カトCLに抱きつく。皆でハグをして登頂を喜ぶ。
登頂成功!ありがとうございました!!

広い頂上は360度のパノラマ。北アルプスまで一望。富士山も悠々の姿。天国のようだ。
目の前には赤岳がそびえたち、来たいなら、来れば?といっているよう。
ただし、現在13時。私の体力も時間も限界だ。赤岳はまたのお楽しみにとっておこう。
とは、言いだしっぺの負け惜しみ。まったく、どの口が赤岳まで行きたいといったのか、という疲労感。
さて、ここから中岳に下る急斜面が噂どおりよくない。
キックステップが利く雪の状態のため、後ろ向きで下りれば、さほど恐怖感はないが、
凍ってたり、雪が腐っているとぐっと難しくなるだろう。
だか、たかたかは1人、ぐっちーさんが刻んでいったステップを前向きのままスルスルと下りる。
天性のものか、非常にバランスがよい。もう、やんなちゃうなぁ。必死についていく。
まもなく、中岳の前のコルに到着。
阿弥陀頂上から中岳、赤岳。また来ます!! 太陽を背に阿弥陀から降りてくるカトCL
ここまで下りが結構やらしい


本来は中岳を越えて行者小屋に下りる予定が、そのまま中岳のコルを下りることに。
雪崩の危険地区とのことで、駆け下りろ!!とのカトCLからのお達し。
たかたかと対象的にバランスの悪い私は何度も足をとられてしまう。軽く足をひねったりしながらも、とにかく根性で下る。

行者小屋に無事について、休憩。カトCLから最終バスはあきらめてゆっくり下りようと伝えられる。
一同賛成して、同じオーダーで下山開始。
なのに、南沢をゆくグッチーさんが疾風のように早い。北稜の下りは早いのは知っていたが、ゆっくり下山っていったのにーーっ!!
と半ばキレつつたかたかもついていっているのに、私が音を上げるわけにはいかないと、意地でついてゆく。
1時間くらい下ったろうか、いきなり、たかたかがピタリと足をとめて振り返る。
日焼け防止の為に鏡面加工のゴーグルと目出帽をしているたかたかの表情がよめない。
どうした?と聞くと肩で息をして
まともにしゃべれない。カトCLにお願いして、休憩を一本。どうも行者小屋までは体調がもっていたようだが
下りてきてほっとしたからか、風邪がぶりかえしているようだ。
風の様に早いグッチーさんに、牛のようにのろいさぶがトップを交代し、ゆっくりと下る。
あと少しで美濃戸山荘前というところで、再度、後ろを振り返る。たかたか、相当しんどそうだ。
一本立てるのと同時に、カトCLに荷物を分けることを提案、本人は固辞したが、ここは我慢してもらう。
いや、ここまで一言も音をあげず、本当によく頑張ったと思う。気づいてあげられずに申し訳ない気持ちになる。
荷物をあけて、自分たちのザックに入るだけ入れ、下げられるだけ下げる。
ここで、軽くなったたかたかのザックの肩紐を目一杯伸ばし、カトCLは、自分のザックの上から背負う。
なんと、これが噂のダブルザックか。。。リーダーかっこいい。。。

美濃戸山荘までなんとか到着し、ベンチでたかたかに休んでもらう。
ここでカトCLより指令。
この先の駐車場にて車入りしている人がいたら、頼んで、美濃戸登山口まで、たかたかとつきそいの1人を乗っけてもらえるように交渉すべしと。
さっそく、”ゴネ”シエーションが得意な交渉人さぶは、駐車場まで小走り。

駐車場を見やると、人のよさそうなおじさんが今まさに車に乗り込み出ようとするところ。
こ、この人だ!!
とストックを振って、進路をとめる。事情を話すと、二つ返事でOK、その上、なんと4人全員をのっけてくれるという。
なんていい人なんだ!!お礼をいい、早速、カトCLに電話し、皆に駐車場まで来てもらう。
小学生の息子さんと山登りをしているらしく、息子さんはとても素直なよい子。狭い車内で、私の膝にちょこんと乗る。かわいい。

しばし、山談議をしながら、美濃戸登山口で下ろしてもらい、
平身低頭、お礼を言う、カトCLが呼び寄せてくれたタクシーへ。
ここで下山報告。
遅くなり、ご心配をおかけしました。

今回は天候や雪の状態がよく、事故もなくよかったが体調不良の場合の山行について考えさせられた。
後のカトCLの言。
「二日目の検温で微熱を確認したところで、すぐ下山するという選択肢をとらなかった
件に関し、反省が残る」とのこと。
私も無理するタイプなので、本件、心に残したいと思う。

とまれ、今回の無事を、終始リード&フォローしてくれたカトCL、グッチーSL、頑張りぬいた、たかたかちゃん、
そして、最後まで太陽の祝福をくれた山の神様に感謝したい。

本当にありがとうございました。