五竜岳(春合宿)

ミナト

期日:2011年5月3日〜2011年5月6日
参加者:笹田(CL)、藍澤、カト、あつこ、sa山、グッチー、ワン、ミナト


※G2登攀のカトさんの記録はこちら
5月3日
テレキャビン終点10:50〜地蔵の頭11:20〜小遠見12:50〜BC14:50
5月4日
BC5:00〜白岳6:50〜五竜山頂8:40〜BC13:00(カト、あつこ、藍澤、sa山、グッチー、ミナト)
BC5:00〜G0頭12:00〜BC15:00(笹田、ワン)
5月5日
BC5:00〜G2取付5:50〜G2頭(11:00〜13:50)〜BC17:00(笹田、カト、あつこ、sa山、グッチー、ミナト)
BC〜五竜山荘往復(藍澤)
BC〜下山〜帰京(ワン)
5月6日
BC7:00〜テレキャビン9:15〜帰京

5月3日
 いよいよ春合宿の始まりである。そして今回のアプローチは、リッチなことに新幹線だ。何を隠そうわたくしミナトは、高校の修学旅行以来の新幹線乗車で、実に32年ぶりだ。早いぞ新幹線!ということで、ひとりだけ大興奮の新幹線はあっという間に長野駅についてしまった。
 その後、バス、テレキャビンと乗り継ぎ、五竜遠見スキー場のてっぺんに到着。スキーヤーの迷惑にならないようにこそこそとスキー場の端っこを登り、地蔵の頭に到着する。バーンと五竜岳が姿を現す。武田菱の岩場がカッコイー。ここから先は登山者の世界なので堂々と歩く。3泊分の重荷と気温が高いせいで汗だくになるが、鹿島槍も見えてきて気分は盛り上がる。小遠見、大遠見と登るにつれ雪も多くなるが、ほどよく締まって歩きやすい。笹田CLの判断で西遠見手前の、立ち木が適当にある場所をBCに決定する。選定理由は、
  ・春山では昼間の高温で雪が融けペグが露出し、テントが強風で飛ばされてしまう。
  ・従って、立ち木に張綱を固定できる場所にテントを張ることが望ましい。
一同、「ほほう」と頷き納得する。大変勉強になります。
 人海作戦で風除けの雪ブロックを積上げ、要塞のようなテン場が出来上がる。目の前には、五竜岳、その左に鹿島槍ヶ岳の北壁が聳える素晴らしいロケーションだ。まるで雑誌の表紙みたい。一息ついていると、後発のsa山さん(別名 歩く居酒屋)がビールとつまみを大量に担いで到着した。今夜のワンさん自慢の塩ちゃんこが楽しみです。
有名な武田菱がきれいに見えます 要塞のようなテン場

5月4日
 今日の行動は、笹田CLとワンさんはG0稜の登攀、残りの人は一般道で五竜岳を往復し翌日のG2稜の偵察を行うことにする。
 3時半に起床し、カトさん得意の野菜ラーメンで腹を満たす。天気は高曇りで、五竜岳の頂上付近はガスっている。風はあるが、気温が高めなのであまり寒さは感じない。先にG0稜隊を送り出す。笹田CLの握るロープにつながれたワンさんの何ともいえない不安げな表情がいじらしげだ。思わず「ワンさん頑張れ!負けるな!」と心の中でつぶやいてしまった。
 偵察隊は、3人ずつ2パーティに分かれ、練習の為にコンテで行くことにする。システムはヒマコンだ。白岳を登るあたりでG0の急斜面に取付く笹田隊を発見しケッチボーを叫ぶと、笹田CLがピッケルを振り答えてくれた。ワンさんは腰が引け、答える余裕がないようだ。
ヒマコンで山頂往復 G0稜登攀組が小さく見えます

 白岳を越えると黒部側からの強烈な西風が襲ってくる。五竜山荘から五竜山頂までは、稜線からやや黒部側に下がった所に道が付けられている。よって強烈な風を受けながら歩くことになるのだが、気温が高めなので厳冬期に比べればたいしたことはない。順調に登頂し写真を撮り、ガスで展望が利かないのでそそくさと下山する。頂上直下の雪壁は念のためスタカットで降下した。途中、驚いたことにピッケルを持たずにストックで下降している単独の年配登山者がいた。パッと見で、ベテランでないことはすぐ分かるような方だ。慎重に下りていたが、滑落したらどうするのだろうか。たとえ春山とはいえ、慎みたい行為である。
 五竜山荘で休憩しつつ笹田隊を待つことにする。しかし、先にG0稜を登攀していた別パーティの情報で、笹田隊が到着するまではまだ時間がかかりそうだとのことだ。しかたがないのでBCに戻ることにする。途中、G0の頭直下を果敢に登攀する笹田隊を確認し、「ガンバレー!」と声援をおくる。その後、ゆっくりとG2稜の偵察を行ないBCまで下山。G2稜は、なんだかとっても厳しそうで、明日の登攀が心配になる。
 BCではのんびりと昼寝をしたりして、笹田隊の帰還を待つ。sa山さんが、すぐ先の斜面を降りてくる笹田隊を確認し、皆でお出迎え。先頭のワンさんは今朝とは対照的な実にいい顔をしている。大きな仕事を終えたカッコイイ男の顔だ。G0稜は大変厳しく、特に這松帯の手足を使っての急登に難儀したとのことだ。G0稜完登の祝杯を盛大に上げたいところなのだが、明日のG2稜登攀を考慮して控えめに宴会を行なう。でもあつこ先輩のマーボ茄子は激ウマでした。
雪庇の割れ目がすごいですね 強風の五竜岳山頂

5月5日
 今日も3時半に起床し、sa山さんの特製スープで体を温める。天気は無風快晴、言うこと無しの上天気。ワンさんは本日下山、藍澤さんはリハビリの為、山荘往復程度にするとのこと。G2右稜の登攀を目指すのは、笹田CLとあつこ先輩のエキスパート組、カトさんとグッチーさんの飲兵衛組、そしてsa山さんとミナトの凸凹コンビという3パーティ構成だ。
 藍澤さんとワンさんに見送られ、G2へ向け出発する。これからの厳しい登攀を思うと、戦場へ赴く兵士のような気分になってしまうが、天気が良いのが唯一の救いである。白岳沢へクラストした雪の急斜面を降下する。取付き前なのに早くも怖い。デブリだらけの白岳沢からG2中央稜とG2右稜に挟まれたA沢をエキスパート組、飲兵衛組、凸凹コンビの順で登り返すが、途中で飲兵衛と凸凹が入れ替わる。雪壁は次第に急になり、コンテからスタカットに切り替えたところで飲兵衛組にアクシデントが発生。詳細は、カトさんの記録を御参照下さい。
 ダブルアックスでないと登れない急雪壁を、喘ぎつつ登攀する。所々シュルンドが走り、気を使う。それにしてもsa山さんは支点の取り方がうまく、そして早い。ビレイ点に到着すると頑丈そうな灌木を見つけささっと支点を構築してしまう。ぜひとも見習うべきことだと思った。8ピッチの雪壁登攀を終えると、3級ほどの岩稜帯の取付きに達した。先のエキスパート組は、もうこの岩稜帯の登攀を終了したようで、「さすがはエキスパートだ!」と感心してしまう。
白岳沢のデブリ。これから果てしない登り返しです 急な雪稜を登ります

 ここまでの登攀でヘロヘロになってしまったミナトは、情けないがsa山さんに岩稜帯のリード固定をお願いする。岩稜帯は全部で3ピッチ、最後の3ピッチ目の角度が立った岩壁が核心だろう。トップで慎重にランニングを取りながら攀じるsa山さんに比べ、フォローされながらセカンドで登るミナトは、「いい景色だね〜、岩と雪と青空のコントラストが最高だね〜。」などと言いながらの快適クライミングだ。
 2ピッチ目の終了点に到着すると、不安定な場所でフォローしてくれていたsa山さんが「そこの岩の裏側にいいビレイ点がありそうだからさぁ、そこまで登ってよ。」と言う。素直に従い、ちょっといやらしい岩を登ったら、向こう側は足元が切れ落ちた絶壁であった。「ビレイ点なんかないよー!」と叫ぶと、しばらく沈黙の後「じゃあ上まで行っちゃってー」とsa山さん。「ひょえー」さっきまでのお気楽モードは吹っ飛び、いきなりの本気モードに突入してしまった。「なんで核心部をリードしなきゃならないんだよ」とぶつぶつ言いながらも、三つ峠の教訓から「リードは絶対に落ちちゃダメだぞ!」と自分に言い聞かせる。過剰なほどランニングを取ったためロープの流れが重くなるが、全力で攀じる。そして最後の垂直な壁で行き詰まってしまった。ホールドはすべて浮石でどうにもならない。這松の太い幹があるのだが、あと20センチ届かない。「そうだ、ピッケルがあるじゃないか!」と腰のピッケルを取り出し、這松に引っ掛けてみた。ガッチリと効いたピッケルを両手で握りヨイショと体を持ち上げ、なんとかこの難場をやり過ごすことが出来た。上へ抜けるとゆるやかな鞍部で、あつこ先輩は這松を背にお昼寝中。どんな夢を見ているのだろうか。sa山さんを引き上げ、無事凸凹コンビも登攀を終了した。
岩を縫ってザイルがのびていきます 岩稜上部の凸凹コンビ

 岩ツバメが青空を舞っている。鹿島槍に続く岩壁は巨大なソフトクリームのようなキノコ雪を纏い、まるでヒマラヤのようだ。ここでは時間が止まったように感じる。やがて、飲兵衛組が賑やかに到着した。少し遅れた理由は、カトさんが岩稜登攀中に大キジを打っていたかららしい。本人曰く「残念ながら不発だった」らしいが、誰も見ていないので真相は定かでない。これからG2右稜を登る人はホールドに十分注意されたい。手を伸ばしたら、そこには×××が…。鹿島槍のサブさんといいカトさんといい、最高に緊張する場面でこのような行為に及べる図太い神経は、尊敬に値すると思う。このような方々に支えられている北稜の将来は明るい。
 雪稜をもう1ピッチ越して登山道に合流し、BCを目指す。BCでは藍澤さんが出迎えてくれた。全員で握手して、G2稜登攀成功を喜び称え合う。もう最高の気分だ!今夜は盛大に祝杯を上げよう。
 グッチーさんの手料理で盛上がった宴会もお開きになり、テントから外へ出る。そこには空一面に星が瞬いている。すごい数の星だ。それはまるで星たちも我々の成功を喜んでくれているかのようであった。
岩稜上部のコルにて合流 最後の急な雪稜を登り・・・
ようやく一般道に合流! 鹿島槍がキレイに迎えてくれました


5月6日
 今日は下山するだけなので、のんびり起きて朝食を食べ、お世話になったBCを後にする。皆は、昨日の興奮が覚めやらないのか、頻繁に立ち止まっては五竜岳を見て、登ったルートをああだこうだと話し合っている。実に楽しいひと時だ。やがて、懐かしいテレキャビンの駅が見えてきて我々の合宿が終了した。

まだまだ記録に残しておきたい出来事はたくさんあります。例えば
 ・ワンさんついにお父さんになるニュース
 ・笹田CLのジャニーズっぽい髪型の秘密
 ・笹田CLとグッチーさんのオナラ勝負
 ・sa山さん、スコップ貸出し物品強奪事件
しかし、紙面数の都合があり、残念ですが割愛させていただきます。

 その後、バス停〜バスの車中〜新幹線とお約束の宴会が続いたが、飲兵衛組のお二方はさらに上野の繁華街へと消えていってしまった。二人にとっての合宿はまだまだ終わらないようだ。

最後に
 今回の合宿では、すべてにわたり心温かくサポートして下さった藍澤さんに大変感謝しております。テント場やトイレの整備、水作り等、若い者がやらなければならないことを、さりげなくやっていただいてしまい、本当に申し訳ありませんでした。藍澤さんが気付く前にやらなきゃならなかったと、反省しております。今回に懲りずに、また、合宿に参加していただいて、いろいろと教えて下さい。よろしくお願いいたします。そして藍澤さんに入れていただいたドリップコヒーは最高にうまかったです。