蝶ヶ岳(冬合宿)

ケイ、カト

期日:2009年12月29日〜2010年1月1日
参加者:笹田、部長、あつこ、ケイ、カト


12月29日
新宿7:00(スーパーあずさ)−9:39松本(タクシー)11:00釜トン11:30−13:15河童橋−14:30明神−15:30徳沢(幕営)
12月30日
起床3:00、徳沢4:30−8:50長塀山−9:55蝶ヶ岳10:35−11:20長塀山−13:30徳沢(幕営)
12月31日
起床7:00、徳沢9:15−10:15明神−12:00上高地BT(幕営)
1月1日
起床5:30、上高地BT8:15−10:15釜トン−10:35釜トン終了点

(1日目 晴)
 松本駅9:39着。松本タクシー運転手の山田さんが待っている。昨年末の蝶ヶ岳山行釜トン往復でお世話になった。新島々、沢渡あたりは新雪が覆い昨年末より雪は多い。
11:00頃釜トンネルに着く。警察の臨時派出署に登山届を出す。署員に聞くと横尾までの入山者数人を含め50〜60人が入山しているとのこと。
天気は快晴! 吊り尾根が綺麗に見えます

 笹田CL「幕営地の徳沢までは明日の本番に向けてコンディションを整えながら行ってほしい」との注意があり、新人ケイを先頭に11:30スタート。ケイの先導で雪道を突っ走り15:30徳沢に着く。徳沢キャンプ場は既に6〜7張りの先客がいる。我々はトイレに近い場所に陣取る。テン場を踏み固めるが新雪のフカフカ雪でなかなか整地できない。フライの竹割りばしペグも機能しないので木の枝をペグにする。
 テント設営後笹田CLは明日の登山口周辺の下見をする。ラッセルを強いられるかどうかが最大の関心ごとで、ラッセルならばビバークは必定だ。下見から帰った笹田CLから「登山道はトレースがありラッセルはないだろう、明日はアイゼン装着で行く」との報告、指示を受ける。カトはほっとすると同時に昨年ブレーキを起こしラッセルの役に立たなかったお返しができないことの残念さと綯い交ぜで複雑な気持ちだ。
 夕食は、部長シェフの自慢のチゲ鍋だ。いつものことだが蘊蓄を語りながら腕を振るう姿は創造性にあふれている。水、調味料の微妙な加減にこだわり、野菜肉の切り方、調理の順序にこだわり、あたかも芸術家のごとし。最近の山行では水を注ぐ加減が悪いと言って助手を首になった者が出たと言う噂がある。恐るべきこだわり。
 豊富な野菜入りチゲ鍋をたらふく食させていただき大満足の後はお茶になる。お茶担当のケイはやおら大きなビニール袋を出す。コーヒー、紅茶数種類、昆布茶、キンカン蕩などなどティーバックがぎっしりと詰まっている。よくまあそろえたものだと感心することと呆れることの半々だが、どちらかというと顰蹙を買う。しかし、この豊富なお茶が後ほど疲れた身体の癒しとして大いに役に立ち顰蹙を撤回することになる。
 明日の本番に向けて19:30頃就寝。風もなく穏やかな北アルプスの麓、徳沢の夜が静かに更けていく。

(2日目 晴後雪)
 3:00起床。朝食は部長シェフメニューのパン、ハム、チーズとスープ。4:30出発。ビバークを考慮し笹田CLから前夜に装備の指示が出ている。ツエルト二張り、ガスヘッド2、ガスカートリッジ各自1、コッフェル2、スコップ1、今晩の夕食、明日の朝食をそれぞれ分担するほか、わかん、ピッケルはもちろんのことシュラフ、テントマット、エアーマット、テントシューズ、防寒着などを装備する。
 カトが先導する。昨日のケイの驚異的な足並みで行かれたらすぐばててしまう恐れがあった。徳沢園の脇の登山口を入りすぐに急登が始まる。ヘッデンの明かりを頼りにトレースを追う。夏道をトレースしているようでテープ標識があり昨年のようなルートファイティングは全くない。標高差400mほどの地点でほぼ1時間を経過し1本立てる。ケイのヘッデンの明かりが乏しく足元が不安だと言うのでカトが乾電池を提供する。カトは8月の劒北方稜線上でいたさんから乾電池の提供を受けて感謝したことを思い出す。
 長塀尾根は長い。これでもかというように急登を強いられる。しらびそなどの大木から小ぶりの松類などに樹相が変わるとピークが近いことが予想される。雪は深いが踏み跡がしっかりしているので迷うことはない。下山パーティ数組と出会うが時間から蝶ヶ岳避難小屋などで泊まった者と思われる。樹林が切れこんもりとしたピークが長塀山ピーク8:50着。4時間20分を要す。道標がなければ通り過ぎてしまいそうだ。
雪に埋まった道標の周りを長塀山の字が見えるほど掘り記念写真を撮る。 目指す蝶ヶ岳は近い。アップダウンを繰り返し、雪で隠れた妖精の池上部に出る。槍ヶ岳の素晴らしい穂先が天を突く。北アルプスの山々の白い稜線が美しい。雪で埋まったハイ松帯の斜面をトラバースし、頂上直下の稜線に出る。ガレ場に出ると猛烈な風に曝される。9:55登頂。ピーク標識の柱に抱きつき身体を支える。カトはあっちゃん、ケイとハグで健闘をたたえ、笹田CLと部長とは握手で感謝する。
 風が強くカトの帽子が飛ぶ。運よく崖下手前の岩に引っ掛かり部長が走ってキャッチする。カトはこれにも感謝。が、大いなる反省材料だ。下山後に判明したが、カトが飛ばす少し前、ケイが帽子を飛ばしたらしい。テントに帰って部長から「ケイの帽子は救えなかったな」と言われ、ケイ「あら、道理で頭が涼しいと思った」とのたまう。器の大きい人物だ、とカトは思う。
頂上までもう少し! 槍が見えます。いつか行きたい。。。

 ものすごい風のため早々に写真を撮り蝶ヶ岳ヒュッテ避難小屋に行く。小屋入口は鉄製扉で下から持ち上げ備え付けのスコップを支柱に扉を開け、4mほどの狭い通路を這って行くと部屋のドアに辿り着く。強風から逃れてほっとする。
 20分ほど休憩し10:35下山開始。西の空は怪しい黒雲が覆いこれからの悪天が予想される。ピーク下をトラバースするが北西からの強風にあおられ足を踏ん張り1歩1歩進む。先導のカトは妖精の池上部で進路を迷い、笹田CLのリードで妖精の池に降りて登山道に戻る。ここからケイが先導する。飛ばしに飛ばし13:30徳沢テン場に着く。笹田CL持参の砂糖入りホットワインとベーコンで登頂祝いをする。宴会モードで時間が過ぎるのを忘れる。部長シェフ特製のクリームシチューで舌鼓を打つ。下山後からちらついていた雪は本格的になり、風も強くなる。ごうごうと鳴り響く風の唸りの中で寝る。

(3日目:吹雪)
 テントを撤収し、徳沢を9:15出発。吹雪いている。踏み跡はあるが前日からの新雪でつぼ足では歩きにくい。ケイが先導するが明神からわかんを装着。とたんに快調なペースになる。12:00上高地バスターミナルに着く。強風を避けるためにテントはバスターミナルの屋根の下にフライを使わず設営する。テント内でも寒く震える。ケイのお茶が前日に引き続き役に立つ。こぶ茶や、キンカン蕩で身体を温める。14:00過ぎから宴会。残ったアルコール、つまみを出し合い酔っぱらいモードのスイッチが入る。
 飲まないケイがノンベエのために持参した750ml黄ざくら、あっちゃん持参の虎の子の日本酒パックにまで手を出して、雪で冷やし大吟醸もどきにして飲む。酔うほどに話があらぬ方向に向かう。2日目に先導したカトの放屁談。
 カト「放屁のために後続のケイを早足で離そうするとケイは離れまいとついてくるんだなあ。たまらず大音を発してしまい、そのたびに失礼と謝ってたよ」。
 ケイ「あら、なんで失礼と言ってるのかさっぱり分からなかったわ」。
 笹田CL「俺なんぞ、しょっちゅうだよ」。
 部長「おらもだ、謝ることなんぞあんめえ、生理現象はしっかたねえぞ」。
 あつこ「わたしは前を歩く部長のせいにするわ、音が聞こえたら、部長ったらやだわ、てっね」。
 あっちゃんの大胆不敵?沈着冷静?当意即妙?にしばし抱腹絶倒。以上はカトが相当脚色していることをお断りする。
 部長シェフの夕食はハムステーキ。実は、この頃のカトは酔っぱらっていて分厚い肉で贅沢だな、ということくらいしか覚えてない。水が不足しているので翌日朝部長とカトが清水橋下の水をとることした。ガスも最後の1缶しか残ってない。
 暴風雨の中テントが吹っ飛ぶのではないかと心配しながら寝る。夜中12時頃外が明るくごそごそするので変だなと思っていたら、笹田CLがテントの雪を払っていた、とのこと。リーダーの行動に頭が下がる。

(4日目:吹雪)
 いよいよ最終日の元旦。5:30部長、カトは吹雪いている中、清水橋下の支流に水取りに行く。部長は凍るような水の中に素手を入れポリタンに水を汲む。朝食は、部長シェフの思いもかけぬおせち料理だ。雑煮、かまぼこ、黒豆、昆布巻きで新年を祝う。上高地で正月料理とは感激だ。
 吹雪の中、テントを撤収し8:15バスターミナルを出る。かなりの新雪だが、踏み跡が残っていて助かる。先頭のケイはわかん装着で軽快に進む。50〜60cmの新雪は思った以上に時間を要し10:35に釜トンを抜けた
。  タクシーで坂巻温泉に寄る。山田運転手は待ち時間はサービスとのこと。温泉につかり4日間頑張った身体を癒す。山水画のような外の雪景色はまるで別世界だ。
降りしきる雪の中、釜トンへ。。。


 2008年の年末山行は笹田CL、あっちゃん、カトは蝶ヶ岳に挑み撤退した。また、4,5年前横尾から挑んだ部長は悪天のため撤退したとのこと。今回は天候に恵まれたこと、トレースがあったことなどの条件がよく幸運にも登頂を果たした。幸運が重なったことに加えて的確な判断によりリードしていただいた笹田CLの存在なくしては成しえなかったことも事実だ。感謝に堪えない。また、食事担当を一手に担っていただきチームの核として面倒見ていただいた部長にも感謝したい。あっちゃんの冷静な行動、的確な助言にも助けられた。新人のケイは初めての本格的な雪山経験で先輩の行動は大変勉強になった、と同時に4日間無事乗り越えられた体力にちょっぴり自信を持てた。カトは北稜の皆さんと1回でも多く楽しい山行をしたいと改めて思った。

   反省がある。ガスカートリッジのことだ。各自1缶の計5缶はぎりぎりであった。4日間雪から水を作るには少なくともあと2、3缶は必要だ。ビバークしていたら全く不足だ。今回の山行の場合は人数の1.5倍の量で多少余すことが適量だと思った。今後の糧にしたい。