剱岳

ぺがさす

期日:2007年10月6日 - 8日
参加者:ぺがさす 他1

コースタイム
一日目 立山駅(6:20) - 美女平(6:30) - 室堂(7:30/40) - 剱御前小屋(9:18/34) - 剣山荘(10:15/25) - 一服剱(10:43/47) - 前剱(11:24/30) - 早月尾根分岐(12:30) - 剱岳(12:38/13:20) - 剣山荘 - 剱沢キャンプ場(15:40)

二日目 剱沢キャンプ場(6:10) - 真砂沢ロッジ(7:50) - 二俣(8:39/50) - 仙人峠(10:30) - 仙人池ヒュッテ(10:47/11:30) - 仙人温泉(12:39/13:12) -1629mピーク(13:39) - 仙人谷木橋(15:13) - 仙人ダム(15:26) - 阿曽原温泉小屋(16:24)

三日目 阿曽原温泉小屋(5:00) - 大太鼓(7:30) - 欅平(9:22)


プロローグ
今回はYCCのI氏という強力な友人と一緒に、2泊3日で剣岳本峰+仙人池で紅葉の八峰+仙人温泉+阿曽原温泉というてんこ盛りのコースとした。普通2泊3日で室堂から仙人−阿曽原方面に行く人は、初日は剣本峰には行かず、真砂沢まで行くのが普通だと思うが、去年のリベンジという意味で、どうしても本峰を踏みたかったのだ。

この時期に剱や後立に入山するのは危険が伴うというのは去年嫌というほど味わっているので、慎重に天気、装備、ルートを検討した。天気図、高層天気図をみて天気と気温予想、その予想の元に装備を決め、ルートは、その重さを持って歩ける体力、技術、経験的に十分行けそうだと判断して決めた。一部不明な点(雲切新道)もあるがホームページなどの情報を集め問題がないと決定。

参考までに主な装備は
ゴアテント+フライ      −ゴアだが、寒いと嫌なのでフライも
軽登山靴 +スパッツ    −なぜ軽登山靴?なぜなら天気がよさそうだったから。
                  ただ三日目が雨なのでかなり迷った。結果論としては軽登山靴で正解。
軽アイゼン           −剱沢の雪渓が残っているため。だが結局使わなかった。
ストック             −持って行って助かった
冬用ダウンシュラフ              −寒いと嫌だから。でも暑かった。
冬用下着、フリース      −これはこの時期には必須。
144MHz / 430MHz無線機  − 剱沢を下ってしまうと携帯が通じなくなる可能性がある為
当然ながら重量は夏山よりかなり重くなる。

10月5日(金) 前夜
9時にYCCのI氏と目白駅で待ち合わせ。9時30分頃にやっと現れる。そのまま関越に乗り、「この調子だと立山駅で2時間位寝れるかなぁ」と思っていると、嵐山付近で、「テントポール忘れた」とI氏。花園でUターンして東京に舞い戻り、テントポールを持って12時に再出発。この時点で仮眠は不可能になった。

10月6日(晴れ) 一日目
関越自動車道の藤岡JCTで上信越道、上越JCTで北陸道をひた走り、立山ICに到着。コンビニで買出し。立山駅に着いたのが朝5時過ぎだった。立山駅ではすでに駅の電気がついており、切符売り場の前には人だかり。「やばい」と思い、急いで列に並ぶ。ケーブルカーの始発は6時20分。この50分前に切符が売り出される。定員は120人程で、それから外れると次のケーブルカーになる。幸いまだ30人程だったので、問題なく始発のケーブルカーに乗れた。これに乗れれば、高原バスは問題ないはずなので室堂7時30分到着が確定。ほっとする。バスの50分ほどは景色など見ずにひたすら寝ることに集中。

室堂で水をくみ、7時40分出発。ぶらぶら歩くと去年ザックカバーを飛ばされた雷鳥沢。当然見つかるはずもなく、雷鳥沢の登りにかかる。天気はどんより曇り。日差しがなくて登りやすいが、天気予報が晴れだったので、「うーむ、今年もツイてないのかな」と思いつつ、さくっと1時間程で剱御前小屋到着。早くついたので15分ほど休む。時間短縮の為、剱沢へは下りず、剣山荘へとトラバース。山荘横に荷物をデポし、10時25分、最小限のビバーク用品だけ持って剱本峰を目指す。一服剱に10時43分到着。前剱がかなり急峻に見える。一旦下り、登りだすとそれほどでもない。さくっと、11時24分前剱頂上に到着。天気が急速に回復し青空の中、剱本峰がどーーんと見える。ここから再び一旦下って、登り返す。めんどくさいなぁ。鎖場が連続するが特に難しくはない。さすがにカニのタテバイはちょっと緊張。こういう垂直の登りは結構疲れるなぁ。タテバイを登りきり、だらだら登っていくと早月尾根との合流点があり、12時38分頂上到着。室堂から約5時間だった。なんと、祠が無くなっている。残念。記念写真や風景写真をひとしきり撮ると頂上で昼寝する。13時20分に下山にかかる。下山してデポした荷物を回収。剱沢に登り返しテントを張る。その日は眠いのでビールで乾杯し、夕飯を食べて18時には就寝。

剱御前小屋から室堂方面の望む 御前小屋から剱岳
一服剱から前剱。急峻に見えるがそれほどでもない 前剱頂上。本峰までまだあんなにある。。
カニのタテバイを登る 剱岳頂上。祠が無い。。。
五龍、鹿島槍、爺ヶ岳。手前は源次郎尾根 ビールで乾杯!




10月7日(快晴) 二日目
4時30分起床。朝4時に起きようと言っていたのに寝坊した。I氏が起きない。叩き起こして朝飯を食い撤収。6時に剣沢小屋出発。剣沢を降りていくと雪渓がでる。スプーンカットに足を置いていけばアイゼンがなくても下れるがしりもちをつきたくなかったらアイゼンをつければ完璧だろう。 源次郎尾根、平蔵谷、長次郎谷などI氏の説明を聞き、7時50分に真砂沢ロッジ到着。そのまま通過。二俣に向かう。途中三の沢、四の沢、二股などで水が豊富にあるのでここで水を汲んで仙人新道の登りにはいる。最初が急登。しばらく登ると視界があけ、八峰が眼前に見える。I氏が色々説明してくれるのだが、快晴で暑いし、ひたすら登りなので、疲れて頭が回らない。やっとの思いで仙人峠に着き、木道を下ると仙人池ヒュッテだ。バテバテなので、ラーメンを注文して紅葉の裏剱を眺めながら食べる。なかなか見られない風景なので記念写真撮りまくり。なごり惜しいが先は長いので、仙人谷に降り仙人温泉を目指す。谷沿いの道なので、結構気を抜けない。仙人温泉に12時半に到着し1000円払って入浴する。ぬる目のお湯で最高に気持ちがよい。後立の山並みをみながら温泉に入れるなんてなんという贅沢。ああ、ここに泊まりたいと思いつつ、いやいや阿曽原でビール飲むぞと気合を入れて13時12分出発。

ここからは去年11月に出来たばかりの雲切新道で、多くの登山者が歩くのは今年の夏からだ。仙人温泉から一旦仙人谷に降り、対岸(右岸)に渡る(木橋あり)。そこから仙人温泉の源泉(煙が昇っている所)のすぐ横を通りながらトラバース気味に1629mのピークまで登っていく。ピーク付近は比較的平らだが、尾根沿いの下りが始まるとかなりの急斜面が続く。ハシゴとロープが連続し、斜面は木の根が夥しく出ており、かなり気を使う。雨が降っていたらドロドロになりかなり滑るだろう。ひざを保護するためにも転倒を防ぐ為にも、ストックがあると非常に心強い。延々と降りていくと、やがて水平気味の道になり、やがて仙人谷を渡る木橋が現れる。この橋で今度は左岸に渡り、水平の道を歩くと、すぐに長いハシゴ(3段か4段)が現れる。高度感ある(下は黒部川)このハシゴを降りると再び水平の道になり、すぐに仙人ダムに着く。ここからダム内部の日電歩道を歩き、関西電力の人見寮の横を通りすぎると、登山道に入る。ここからがまた急登。雲切新道で延々下らされたのに、ここでまた登り。ここが本当に疲れた。登りきると水平の道になり、やがて阿曽原温泉に降りる分岐が現れる。10分も降りれば阿曽原温泉に到着。

阿曽原についたら驚愕の事実。小屋の受付のあんちゃんが、欅平は観光客で混むので朝10時までに下山しないとその日に宇奈月に戻れないかもしれない、という。「え??」と一瞬耳を疑う。リサーチ不足の完全なミス。10時に下山って、休憩なしのコースタイムで行くとして朝5時発かよ。。最終日くらいゆっくり寝てたかったんだけどー。

平蔵谷 雪渓崩壊部分
仙人新道からみた八ッ峰 仙人新道から見た三ノ窓雪渓
仙人池に映る紅葉の裏剱 後立連峰をみながら仙人温泉に入る
雲切新道。源泉の横を通って右岸を登っている こんな急斜面が連続します


10月8日(雨) 三日目
予想した天気では朝9時あたりに寒冷前線が通過するはずだ。雨は確実なので、ゆっくり帰ろうと思っていたのだが前日の驚愕の事実のため、朝3時起きになる。雨はかなりの本気降りで憂鬱な気分。しょうがなく朝5時出発。最初は登りが続きうんざりだ。かなり登ってからやっと水平歩道にはいる。阿曽原にいた人はみんな5時前後に出発しているのでところどころで渋滞につかまる。水平歩道は文字通り水平なので、我々のペースは早足、時には走ったりする。所々道幅が狭く落ちたら即死のような所があるが、場所によっては奥多摩を歩いているような錯覚に陥る場所もある。そういう所で走って渋滞をゴボウ抜き。雨が激しく黒部川は濁流と化している。水平歩道は何回も枝沢を渡渉するような所が何回もあり、そこでは修行僧のように滝に打たれながら通過しなければならない。当然ながら全身びしょぬれ。いかに雨具に防水スプレーをかけたりスパッツをつけても滝にうたれたらひとたまりもない。それでもしばらく靴の中は乾いていたが、折尾谷のトンネルの中はひざ下まで水がありジャボジャボ歩いていかないといけない。この時点でどんな靴を履いていても濡れないということはありえない。むしろ重登山靴をはいていたら重たくなってしまうだろう。こんな感じでひたすら欅平を目指すわけだが、当然ながら不快さ満点。早く宇奈月で温泉に入りたい一心でハイペースで急ぐ。大太鼓では奥鐘山西壁が見えてくる。I氏は数年前はこの壁によく通ったそうだ。志合谷の寒い150mのトンネルを過ぎ、ひたすら、ひたすら水平歩道を歩くとその西壁が正面に見えてくる。残念ながら雨で天気が悪いためにガスガスでよく見えない。相変わらず岩壁を雨水がシャワーのように降り注ぎ、頭のてっぺんから足のつま先まですぶ濡れ状態。この状態で気温が下がったら低体温症になりそうだ。ただ、水平の為いくら歩いても疲れないし、止まると寒いので歩き続けた。結局欅平まで4時間20分休憩なしで歩き通した。

欅平ですぐトロッコ電車の切符を買う。雨のせいで観光客が少ないのか阿曽原のあんちゃんが言ったような事態にはならず、なんの問題もなく帰りの切符を手にする。下山報告してお土産を買ってトロッコ電車に乗り込む。当然普通車(窓なし)にした。が、、寒い。。寒すぎる。。山では使わなかったフリースを初めて使う。1時間寒さに我慢して宇奈月に到着した。立山駅で頼んだ回送サービス(13000円也)が少し遅れた為、車が見つからずあせったが、結局10分後に到着。おかげで駐車場代900円がういた。ラッキーだ。車で温泉へ直行。レストランで腹を満たし、お土産を買って、東京にむけて出発。帰りは北陸道を北上し長岡JCTから関越に入り、7時過ぎに自宅に到着した。

こんな滝が連続して現れる 折尾谷。砂防提にトンネルがあるが出口が滝をかぶる
奥鐘山 西壁 水平歩道。人が歩いているのが見える


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なんといっても最初の二日が晴天だったのがよかった。それに2人という少人数で機動力があったのがよかったと思う。初日に剣岳を往復できた為、二日目に阿曽原まで行けた。これで最終日の悪天候に対してかなり余裕ができてよかった。もし二日目早朝に本峰往復していたら、時間的にも阿曽原まで行けず、池の平でテントを張っただろう。そうすると、最終日の大雨の中、雲切新道、水平歩道をあるく破目になり、時間がかかり、増水もしていたので、その日に下山できなかったかもしれない。(実際内蔵ノ助平では登山者が流されている) このコースは悪天候では危険度が高い場所が何箇所もある。この時期の剱はやはり山行の成否(さらには生死までも)が、天候に大きく左右される。最低でも天気図が読め、悪天候から生じるリスクを事前に察知しないと、案外簡単に遭難してしまう山域である。特に剱沢を降りて深部に入るととエスケープが容易でないと思う。