白峰三山縦走
ぺがさす
 

日  程 2006年9月23日(土)〜24日(日)
メンバー ぺがさす(単独)

一日目 芦安山渓園〜広河原(6:30)−白根御池小屋(8:06)−大樺沢二俣(8:27)−八本歯のコル(10:04)−北岳(10:55)−北岳山荘(11:42)−中白根山(12:18)−間ノ岳(13:14)−農鳥小屋(14:07)

二日目 農鳥小屋(5:10)−西農鳥岳(5:48)−農鳥岳(6:18)−大門沢下降点(6:48)−大門沢小屋(8:22)−奈良田(10:22)


9月23日(土曜日)

金曜夜10時新宿発広河原行きのバスに乗る。バスは深夜1時に芦安山渓園に到着。乗客みんなで大広間で雑魚寝。朝5時の出発まですこし寝ることが出来た。バスが来ると叩き起され、広河原に搬送された。6時過ぎに広河原に到着。

久々の単独行で荷は重い。よせばいいのに食料はレトルトだ。登山道に入ると、ザックの重さが腰にズシッっと来る。寝不足なのかボーッと前の人についていくと、なんだか樹林帯を登っている。いつの間にか大樺沢への分岐を見逃し、白根御池小屋への尾根だった。ガーン。コースタイムで一時間も遠回りである。しょっぱなからかなり凹む。しかし、コースタイムより1時間早く白根御池小屋に到着。ここからトラバース道を使って大樺沢に復帰。やった!合計で大樺沢からのコースタイムとそんなに変わらないぞ、と思ったが、うーん、道を間違えなければもしかしてもっと早かったのか?

二俣から上を見るとガスだらけで山頂は見えず、ただひたすら八本歯のコルを目指してエッチラオッチラ登って行く。暫く登って行くと、木の梯子が連発するが、これがツライ。細かい休憩を取りながらやっとの思いで八本歯のコルへ到着。ここで初めて大休止を取る。少し登って北岳山荘への分岐にザックをデポし、北岳を空身で往復する。ザックが無いと空を飛べそうな身の軽さだ。さくさく登って行くと、単独のおじさんに話かけられる。「今日はどこまで行くの?」「農鳥小屋までです」「ああ僕も農鳥小屋までいけるといいなと思ってるんだ」「まだ時間早いし行けると思いますけど」「じゃあ一緒に行きましょう」「でも僕はまだ北岳登って来るんで先行ってください」と別れる。単独だとこういう出会いがあるのが楽しい。北岳に登ると辺り一面ガスでまったく視界はない。一応記念撮影して三角点を見てみると、7月に新しくなったばかりの三角点だった。

ザックのデポ地に戻り北岳山荘に向かう。途中はお花畑のはずなのだが、ガスでよくわからん。北岳山荘はとても綺麗な山荘で、、、と、そのまま通過。たいした高低差もなく中白根山に到着。記念撮影し、間ノ岳に向かう。展望がよければ最高の稜線歩きなのだろうが、濃いガスでまったく視界なし。ルートを見失わないようにゆっくり慎重に進む。間ノ岳が近くなると、広い平らなザレ場になり、ルートがわかりづらい。2度ほどロストするがすぐ復帰する。13時過ぎに間ノ岳到着。5分程休んで、今日の幕営地、農鳥小屋に向かう。かなり急なザレ場を下ると緩やかな傾斜地になり、農鳥岳方面が見渡せ、農鳥小屋の赤い屋根が見える。さくっと2時過ぎに小屋に到着した。

農鳥小屋のオヤジはかなりアクが強い。テン場代を払って、ビールを飲みながら先ほどの単独のおじさんと話していると、「はやくテント張りなさい」と怒られた。「はい」と先生に怒られた学生のような気分でテントを張る。怖いオヤジかと思ったが、水場まで往復30分かかるが、今日は小屋の水をあげようと言ってくれる。なんていい人なんだ、とタンクからもらったが、飲むとどうも変な味がする。(でも、あまり考えずに飲む)4時に天気図をとる。台風は父島北を北上中だが、12時間後の予想位置は関東の東海上でどうやらそれてくれるようだ。西から高気圧が張り出して来ており台風の進路が予想通りならば、天気は崩れないだろうと予想。さて飯でも食うかと思ったら、男女二人が隣にテントを張り始めた。二人で景色を眺めながらビールで乾杯なんかしちゃって、なんだか楽しそう。テント張ってしまうと単独は寂しい。早々に寝る。



9月24日(日曜日)

4時に起きて飯を食う。外にでると満点の星空。今日は快晴だ。珈琲を忘れたのでしょうがなく白湯を飲む。テントを撤収し、5時過ぎに出発。隣の男女のテント(これがまた小さいテントなんだよな)はまったく起きる気配がない。「山屋にあるまじき奴らめ」と思いながら西農鳥岳に向かう。この登りが起きがけの体にキツイ。西農鳥岳手前で日の出になる。素晴らしい景色だ。ああ、来て良かった、そう思える瞬間。間ノ岳の横に北岳、地蔵岳がはっきりと見え、その向こうに八ヶ岳が朝日に照らされている。南に目を向けると塩見岳、荒川岳、そして前聖岳、南アルプスの全貌が見える。農鳥岳までは高低差のない快適な稜線歩き。昨日出会った単独のおじさんが「農鳥まで行ってきたよ」とうれしそうに戻ってきた。「またどこかで会いましょう」とがっちり握手を交わす。

農鳥岳で最後の景観を楽しみ、下降に移る。ここからは稜線をはずれた低地だが景色は良い。ホシガラスがそこらじゅうに飛び回っている。山は色づき初めて、空は紺碧。そして周りには誰も居ない。なんという贅沢。気がつくと僕の前には大門沢下降点の黄色い鉄塔があった。

さて、ここから延々と下りが続く。高度が下がることに植生が変わるのがわかる。かなり急な所もあり重装備の場合注意が必要だ。農鳥小屋でもらった水がどうしても臭くて、河原に降りて水を汲もうと思ったら道を外れてしまい、ルートに登り返すのに一苦労した。そんな失敗はあったが快調に下り8時22分に大門沢小屋に到着。縦走の記念にバンダナを買う。さて、ここからさらに下る。途中単独の30代の男性と抜きつ抜かれつ、なんども挨拶を交わす。二人だけのデットヒート下降。もういい加減にしてよ、って頃に吊橋が現れる。この吊橋、かなり高度感があり結構怖い。しかもそれが3つもある。そのうちの一つは「危険、一人ずつ渡ること」「修理<あと読めず>」なんて書いた看板がある。おいおい。これが今回の核心部か?と思いつつ足早に渡る。さらに暫く行くと林道に出る。これから奈良田までも長い。途中一輪車がおいてあって「一輪車に荷物を載せ下山されると楽かと思います」だって。そんな奴いるのか??「使用上の注意を読み、お使いください」だって。これには笑えた。奈良田に着いたのが10時過ぎ。妻と会に下山報告をして、奈良田の里温泉に入る。この温泉はぬるくて疲れた体をほぐすにはとてもよかった。一人でビールで乾杯しているとデットヒートを重ねた人が隣に居た。ビールを酌み交わしながら色々な話をした。山の話、自転車の話。バスが出る1350分までのんびり縁側で話ができてとてもよかった。その人とは身延駅で別れた。僕は東海道から、彼は甲府周りで東京に帰った。なんだか昔から知り合いだったような波長の合う人だった。