奥多摩 高尾山〜陣場山ハイキング 中 村 孝

期 日 1996年11月4日(月)天候 曇り
パーティ 浅香 真美  中村 孝


 9月半より1ヶ月以上続いた風邪と湿疹からどうにか開放された私は大山沢、高水三山とリハビリ山行を重ね、その3回目がうら若き乙女(何と英チャンより若い !!)との高尾山ハイキングだ。

 高尾山口駅の午前9時はハイカーの皆さんで大混雑。「高尾・陣場スタンプハイク」の台紙を貰い、どの道を通って高尾山に行くのか?という基本的な問題を残し、アメ横状態の雑踏の中を歩き出す。

 本日は何処へ行くのかを知らぬ、いい加減な私と違う浅香さんは「稲荷山コースから陣場山」と一言。ケーブルの駅から左の山道に入ると、上の方まで人が繋がっていて、まるで遠足のようだ。前の人を追い抜く気持ちなんか全く失せてしまうくらいの人の連なりだ。地図で見ると取付き辺りは急登だが、実際は大した登りではないので、周りのペースに合わせてお喋りしながらのんびりと歩く。途中1回小休止を取り、1時間30分弱で高尾山着。早速スタンプを押す。ここから先は人が少しは減るだろうと思いつつ、城山へ向う。途中には、立派なトイレ、あずまやがあり、快適なビバークができそうだ。天気が良ければ、この辺りから相模湖と富士山が見えるのだが、今日は残念なことに見えない。

 山は初心者と言い、高水三山の後は筋肉痛に悩まされたいう浅香さんだが、この調子なら陣場山まで行けそうだ。昨日はロシア料理を沢山食べ、ワインを1本空けたという彼女は、全然お腹がすかないというので、景信山でも食事を摂らず、明王峠で大休止をとることにした。(しかし、お酒を飲んだ後は、喉が渇きますねーと、小休止の度にエヴィアンをぐいぐい飲んでいた。この気持ちが良く分かる私は、彼女の言葉に深く頷いたことは言うまでもない。)

 「高尾山に行く」というと山を知らない学校の仲間も、何で?と怪訝そうな顔をする。しかし、この裏高尾の縦走路はアップダウンの少ない、良く整備された非常に気分の良いコースだ。特にこれからの季節は樹木の葉も落ち、陽当たりが良く非常に明るく楽しい所である。しかも、展望に恵まれ、都心から1時間というのだから、行くっきゃない!なのだ。

  栃谷への分岐を過ぎると頭上が開け今まで以上に明るくなり、目の前の小高い所に茶店の屋根が見えると白馬の像のある陣場山の頂上だ。この白馬の像の高さは3m弱だが、小学校の遠足で来たときの印象はその2〜3倍の大きさに感じたものだった。最後のスタンプを押し、展望とコーヒーを楽しみ3時半過ぎに下山にかかる。

  下山は一の尾根から落合への道を取る。山頂の西の端から階段状の下りだが、それも少しの辛抱で、緩やかな歩きやすい道となる。今までは、周囲には必ず人がいたが、この道では3人と出会っただけで、静かな歩きを楽しめた。秋の夕暮れに殆ど人に出会うことなく、静かな山道を落ち葉をカサカサ踏んで歩くのは、殊のほか気持ちが良い。浅香さんの歩きも大分良くなり快適そうだ。

 高尾への登りの頃は前傾姿勢で、ぎこちない歩きで足音も大きかったが、今では安定した足取りでトコトコと下りて来る。

 落合から藤野までは臨時のバスがあったので、迷わず乗車する。というのは、藤野までの距離は大した事はないのだが交通量がそこそこある上、途中で歩道がなかったり、一車線のトンネルの中を歩いたりとあまり気持ちの良くない車道歩きだからだ。

 駅に着きザックを降ろしたら浅香さんの姿がない。うら若き乙女のことだから洗顔に行ったのだろうと思い、私も顔を洗いに行く。戻ってきてもまだ姿が見えないので、周囲を見渡すが見つからない。「まさか・・・、そんなことは・・・」という思いで恐る恐る駅前の酒屋方面を見た私は、その店先の光の中で、缶ビールを片手に「遅いぞ!!遅いぞ!!」と全身で訴えている、当年22歳の乙女の本日最高の笑顔を発見したのであった。