後立山縦走

夏合宿縦走隊番外編 『隊長ヨレヨレ顛末記』

プロローグ

合宿二日前、私は隊長ヅラしてエラそうに参加者にメールを送りました。

内容は、「皆さま、ここまで来たら後は体調管理に気を付けて合宿当日を迎えましょう!」

合宿前夜、軽い悪寒と頭痛に襲われる。「あれ~これはヤバイかも!一昨日会社サボってサイトーさんと深谷ジムで汗だくになって、そのまま着替えず帰ったのがマズかったか?」

7/28 合宿1日目(自宅~長野駅集合~白馬大池テン泊)

ミナト、ユミ、ミナザエモン

4時の目覚ましで起床するも、完全に風邪の症状。「やっちまった!これじゃ穂高合宿の二の舞だ…」3年前の夏合宿で、やはりリーダーであったにも関わらず風邪をひいてしまい、多大なる迷惑をかけたことを思い出し悔いるも後の祭り。「もう行くしかない!」と根性キメて20キロ超のザックを担ぐも、駅まででヘロヘロです。「こんなんで大丈夫かぁ?」でも隊員の新人たちに気を使わせるわけにはいかないので、風邪ひきのことは気付かれない様にしなければ…。

長野駅で新人のユミちゃん、ミナザエモンと待ち合わせ。ミナザエモンがなかなか現れないので探しに行くと、ポケモンGoをしてました。ったくも~。

特急バス~ゴンドラ~ロープウェイと乗継ぎ白馬大池への登山口へ到着です。

「まず俺がペースを作る。縦走はゆっくり、これが基本だ!」と自分が先頭になりゆっくりペースで歩き出すが、なんのことはない、体調不良なのでゆっくりしか歩けないことをカモフラージュする作戦なのでした。そんなことを知らない新人二人は素直に従います。カワイイもんです。のんびりと3時間程登って本日のテン場の白馬大池に到着。静かで綺麗でとても素敵な場所です。池の畔のテン場は平らで水場もあり、トイレも清潔です!

夕食は二人の新人さんが作ってくれたマーボ茄子です。ユミちゃんは油を忘れたので失敗作だと言っていましたが、トンちゃんの「茄子を忘れたマーボナス」に比べればどうってこと無いです。味付けも丁度良くとてもおいしく頂きました。

夕食後はすぐに就寝します。ミナザエモンは飲み足りないと文句を言っていますが、「縦走は早寝早起き、これが基本だ!」とさっさとシュラフに潜り込むが、なんのことはない、体調不良なので早く寝たいことをカモフラージュする作戦なのでした。そんなことを知らないユミちゃんは素直に従います。が、ミナザエモンは従いません!テントの真中であぐらをかき、ひとりで缶ビールをグビリとやり始めました。恐るべしミナザエモン…。

7/29 合宿2日目(テン場~白馬三山縦走~天狗山荘テン泊及びサブ隊合流)

ミナト、ユミ、ミナザエモン、天狗合流サブ、タケ

3時半起床。外には星が瞬いていますが、体調は昨日より悪くなっている感じです。う~んマズイなぁ…。朝食のラーメンもほとんど喉を通らず、二人に全部食べてもらいました。

予定の5時を少し過ぎて出発です。ミナザエモン、ごちゃごちゃしたものをもっとまとめて、ちゃんと予定時刻に出発できるようにしましょうね!

天気も景色も上々、雷鳥もお目見えし、新人二人は高度が上がるにつれどんどん感激度がアップしていきますが、私は高度が上がるにつれ咳き込む様になり、どんどん体調が悪化していきます。

テンションアップの新人たち

 

新人:「わ~キレイ!」「スゴイ雲海ぃー!」「感激です!」「どこまでも行けそうですぅ」

私:「よかった ゲホゲホッ ね…、ゲホゴホ、カー、ぺッ」「少し休もうか…」

新人:「どっか悪いんですか、大丈夫?」

私:「ぜんぜん大丈夫、ちょっと咳が出るだけ…」とあくまで体調の悪さを悟られないように体裁を繕いますが、もう気付いているんだろうな、たぶん…。

残念ながら白馬岳頂上はガスの中、なのでさっさと白馬岳頂上小屋へ下り休憩しましょう。と、ここでユミちゃんがお知り合いに遭遇です。こんなところで奇遇でしたね!

さて、これから杓子岳、白馬鑓ケ岳と縦走するのですが、「こんなにキツかったか?」と言うほどキツかったです。ですので、景色や状況などの記憶がありません。ただ、杓子岳頂上でサブちゃん隊と無線交信が出来て少し元気をもらえました。

白馬鑓ケ岳をやっと越え、ヨロヨロと本日のテン場の天狗山荘に向かっていると、鑓温泉の硫黄の香りとともになにやら聞こえてきました?どこかで聞いたことのある歌声…野太い拳の効いた…あの歌声は、そうです!北島サブちゃんならぬ北稜サブちゃんでは!!

♪はぁ~るばるきたぜぇしーろうまぁ~ なぁ~なつのさけをの~みながらぁ~♪

上機嫌で歌いながら我々を迎えに来てくれたサブちゃんに「ケッチボー」すると、サブちゃんもケッチボーを返してくれました。嬉しいですね!感動的なお迎えケッチボーです!!

天狗山荘のテン場では、合流隊の新人タケちゃんが我々を発見してなぜかピョンピョンしています!(この後も彼女はいろんな所でピョンピョンしていました。飛び跳ねるのが好きなのでしょうか?)

夕食は私の人生初となるロコモコ丼です。感動的なおいしさ!で、体の具合も良くなり私も思わずピョンピョンしたくなりましたよ!ありがとうタケちゃん!!

人生初のロコモコ丼

7/30 合宿3日目(テン場~不帰ノ瞼~唐松岳~唐松山荘テン泊)

ミナト、ユミ、ミナザエモン、サブ、タケ

3時半起床、天気は多少ガスがかかるもまずまずで、雨の心配はありません。5時出発でサブちゃんを先頭に天狗の大下りへ向かいます。

私は、ロコモコパワーのおかげで元気を取り戻すも、大下り終わったらパワー切れになってしまいました。それにしても、私以外の4人は元気全開です!うらやましい…。

ロコモコパワーが切れた隊長

 

大下り終わると、今合宿最大の難所の不帰ノ瞼です。取付く前にヘルメットと簡易ハーネスを装備し、いざ出陣です。ここで先頭が私に代わります。私がミナザエモン、サブちゃんがユミちゃんの安全を確保します。あれっ、タケちゃんの確保は?えーと、まあ、大丈夫でしょう…。

いざ不帰へ

 

不帰Ⅰ峰は、特に問題ありません。

不帰Ⅱ峰が問題ありです。危ない所には鎖が付いているのですが、高度感があります。でもみんなヘーキなんですね!大したもんです。

危険個所を過ぎてⅡ峰の南峰まで来たところで、安堵したからか、とうとう私が発熱しグロッキー状態になってしまいました。仕方がないので、皆に私の荷を分担してもらうことになりました。「情けないなぁ」とショボクレていたら、ミナザエモンに「つまらない男のプライドなんか捨てちゃいなさいよ!」と叱られてしまいました。う~もっともでございます。

みんなから介護される隊長

 

唐松岳を越えて唐松山荘に到着したところで、さらに情けないことに、私が「もうこれ以上動けません」状態になり、今後の行動ついて合宿最大の決断をしなければならなくなってしまいました。案は二つ。

A案:唐松に全員がテン泊し、明日は八方尾根で下山する。(五竜岳は諦める)

B案:ミナトのみを唐松に残し、サブちゃんが隊長となって計画通りに五竜登頂を実行する。当然、ミナトは明日一人で八方へ下山することになる。

優しいサブちゃんは新人たちを気遣いB案を推挙したいようだが、さて、新人たちはどのように考えているのだろうか?新人たちには難しい選択であり、議論が続く。

この時、私は笹田師匠との合宿を思い出していた。師匠は言う「合宿の良さは、先輩と新人が寝食を共にし、お互いに助け合いながら行動し信頼を築き、かけがえのない山の仲間となっていくことだ。それが同じ釜の飯を喰った仲間というものだ」また、こんなことも教わった「サイゴマデ タタカウモイノチ 友ノ辺ニ スツルモイノチ 共ニユク」松濤明の有名な遺書の一節である。友を見捨てれば助かるかもしれないが、松濤は友と一緒に死ぬことを選ぶ。私の決断は決まった。

重苦しい沈黙を破って私は言った。「リーダー権限で、今日は全員が此処に泊まることにします。そして明日は全員で八方尾根を下山します。以上、よろしくお願いします」

しかし、自分が原因でこんなことになってしまったので、この決断を口にすることにはかなりの勇気が必要であったことを付け加えておきます。小心者なんです自分…。

その後、私は2人用テントに隔離され、みんなからいろいろな介護を受けて、十分な療養を得ることができました。おかげさまで随分と回復したように感じます。本当にありがとうございました。

7/31合宿4日目(唐松山荘テン場~八方尾根で下山~帰京)

ミナト、ユミ、ミナザエモン、サブ、タケ

5時起床、今日も天気は上々で7時出発。唐松山荘前で山ガールモドキのピョンピョン写真を撮ってから下山開始です。

山ガールモドキがピョンピョン

 

尾根道からは、縦走してきた山並みが見渡せます。「あんなに遠くから歩いてきたんだぜ」「ホント、凄いですよね!」小蓮華、白馬、杓子、鑓、不帰、唐松、本当によく歩きました。これぞ縦走の醍醐味ですね!

大勢の登山者と観光客で賑わう八方池山荘とリフト乗場が見えると、合宿も終わりに近づきます。いつものことなのですが、「いろいろあったがもう終わりだ」と思うと、やはりちょっと寂しいです…。

 

エピローグ

隊長の私が不注意により風邪をひき、参加の皆さまに大変な迷惑をかけてしまった事を深く反省します。ちゃんと注意していれば防げた事なのに、本当に情けないことです。この場を借りて皆さまにお詫びします。どうもすみませんでした。

しかし、私がダメになってしまったことで、サブちゃんを中心に新人たちが一致団結し、大変良くまとまったパーティーになったように見受けられます。隊長が頼りにならなくなってしまったので仕方がないことだったのでしょうが、とても頼もしく感じられました。

また、新人たちの著しい成長も嬉しく思います。最終日の八方尾根は登山初心者であふれておりました。4日前は同様の初心者であった新人たちですが、合宿を過ごすうちに歩き方や身のこなしが格段に成長していったことを、この八方尾根の初心者さん達と比較することで十分確認することができました。

最後にお願いですが、これに懲りずにまた山行をご一緒しましょう!同じ釜の飯を喰ったかけがえのない仲間なのですから…。

ミナト記

魚野川完全遡行

 

日程:2016年7月16~18日

メンバー:つりし(L)、ハギ、つかみ(記)

CT:

16日 切明温泉5:50→ 渋沢ダム8:50→  黒沢出合 12:50(幕営)

17日  黒沢出合7:15→ 魚留ゼン8:30… 10:10 → 南沢出合 15:50(幕営)

 18日  南沢出合7:00→ 北ノ沢からの詰めの分岐 9:05→  藪の詰め10:00→稜線 10:50→ 志賀高原高天ヶ原12:10(ゴンドラリフトにて発哺温泉下山13:00→タクシーにて切明温泉14:00

装備:靴/フェルト ザイル/8×30m

 

記録:(16日) 秋山郷の最奥に切明温泉がある。ここの雄川閣旅館の駐車場に車を

泊め車中泊。朝方5時に起き準備を整え出発。まずは渋沢ダムを目指す。約3時間かけて5キロの道のりを進んで行く。歩き始めは平坦な登山道。地元の釣り人、三人組が年期かかったミニバイクにまたがり先をゆく。とっても楽しそう。そして楽そうだ。ダム迄は吊り橋を渡りトンネルを通ったり、これより始まる、長い魚野川完全遡行に向けての準備開始だ。

入渓地手前の吊り橋

ダムより10分ぐらい進んだ地点で入渓。沢靴に履き替え魚野川に足を入れる。天気は曇り。大汗をかいているのに冷たい。あ~だけど気持ちいい。前日に鉄砲水が流れたとの情報を、途中すれ違った東京電力職員らしき人が言っていた。しかし、増水の気配はない。千沢を過ぎた廊下状のゴルジェもなんらく通過。何度か訪れているリーダーも、巻かずに通過なんて、とつぶやく。それぐらい今回は水量が少なかった。

例年より水量がない

曇りがちではあるが、気持ちよく癒されながら登って行く。高沢出合いを過ぎ、大ゼンに差し掛かる。左岸を巻きすんなり超える。

大ゼン

大ゼンから1時間弱進むと、一日目の幕営地、黒沢の出合。ナマリ岩がお出迎え。水量がすくなかったこともあり、予定よりも早くに到着。ほっとするのもつかの間で、私はそわそわした。誰もいない貸し切り状態の大自然。焚火に釣り。ビールに御馳走・・・と頭を駆けめぐった。時間はたっぷりあるのに、心は小学生のようにはしゃいでいた。

黒沢出合幕営地、ナマリ岩

予定では、夕方より雨。一刻もはやく遊びたい心をなだめ、まずはテントを張った。テン場も最高の場所にある。沢よりも一段高め。しかし水場も焚火からも遠くないベストエリア。設営終えると、リーダーつりしのアドバイスを受けイワナ釣りに出かけた。どれぐらい、釣りをしていたのだろう。調理を始めたころは、既に夕刻時である。三人で10匹近くの大捕獲である。ムニエル、塩焼き、ぬか漬け、オリーブ炒め等々、お腹いっぱい満たされた。元気がよかったのかこの日の就寝は22時を過ぎていた。

イワナ

(17日)いよいよ、核心部が顔を出す遡行になる。気が引き締まる。天気は厚い雲に覆われている。いつ雨が降りだしてもおかしくない。小雨が降りだしてきた。合羽を着用して出発した。1時間強進むと、魚止めゼンが現れる。スラブ状の幅の広い滝だ。リーダーがロープをつけ左端から登る。しかし容易に登れない、滑々なのだ。ザックをおろし空身でチャレンジ。すんなりとクリア。次は私の番だ。行ける!と思ったが、やはり素人目線だった。二~三歩踏み出した途端、滝に滑り落ちた。二度も三度も、何度やっても落ちる。挙句、左端から水量が多い右側の隙間で立ち往生してしまった。滝の上で腰がらみをしているリーダーは状況が見えず、テンションがかかりっぱなしなので、腰まで浸かった体を動かせずにいた。淵から見守っていたハギさんとは、滝の音に声がかき消され正確に言葉を交わせない。絶対絶命のピンチ。体が冷え震える。どうしたらいいの!?頭の中は真っ白。もがいているとどうにか元の出発地点に戻れた。ハギさんに先に登ってもらい、最後にトップロープ状態であげてもらい、どうにかこうにか、越えた。魚止め滞在時間は1時間40分にも及んだ。実力のなさを思い知らされた。

とんでもない迷惑をかけてしまった。このあとしばらく音が消えて行く・・・。

恐怖の魚止めゼン

庄九郎大滝までたくさんの小滝の連発。日差しも差し込み見事なナメ床が続く。

ナメ床
連発する小滝

魚止めゼンから進むところ2時間弱。庄九郎大滝。10メートル位だがわりと迫力がある。滝の右側のルンゼを登り巻く。足場は悪く倒木や浮石がひしめき合う。15メートル程登ると、ミナトさんが20年前に張ったらしきロープがあった。そこから先はロープを張りトラバースで進む。

庄九朗大滝、トラバース

その後、穏やかな癒し沢を楽しみ二日目の幕営地、南ノ沢出合15:50分到着。

テン場は、整地無用。ご丁寧にも厚手の銀マットあり。何方かの忘れ物?贈り物?ありがたいのだが、大自然には似合わない物であることも確かだ。どうしたことか、三人して空きっ腹。テントを張る前にハギさん手製のマカロニスープをいただく。この日イワナは釣れなかった。一匹釣ったものの逃げられた。しかし心配無用。昨日数匹ぬか漬けにしておいた。本日のおかずはイワナのぬか漬け。網の上で焼いた。特に皮の部分が美味い。最後の焚火を惜しみながら22時、横になった。

(18日)南の沢出合から北ノ沢。左岸7つめの沢を行く。一本一本確認しながら進む。

方角も合っている。確信をもち7つめの沢を登って行く。そこから100メートル位で3又の分岐。左に曲がり稜線に出る。そんな作戦を練って進む。しかし左側は垂直ちかい壁。登り詰めるような谷間は見つからない。枝沢みたいのが現れた。そこを行くことにした。急な登り。濃い藪に突入する。リーダーを先頭に藪と奮闘を続けた。途中から鋸で狩り進むこと50分、稜線に出た。

藪漕ぎ

寺子屋峰をピークを得て、志賀高原山頂に。開けた高原にはニッコウキスゲが咲き誇り綺麗だ。手付かずの大自然とは、また一味違う美しさだ。

ニッコウキスゲ

大自然って何だろう。魚野川で堪能したはずなのに、言葉にしようとすると難しい。さえずりだったり、匂いだったり。風だったり、色だったり。五感が自然を感知する。ありがたい。こうやって楽しめる一つ一つ。癒しあり。勉強あり。恐怖あり。沢って凄い!

 

 

 

 

 

 

日原川巳の戸谷

日程: 2016年7月3日

メンバー: つりし(CL)、ハギ、アズ、ユイ(記)

CT 八丁橋先、天祖山登山道入口ゲート(7:35)〜林道ガード先、日原川降下ポイント(07:45)~日原川河原にて遡行準備(07:50/08:10)~15m大滝(08:25)〜忌山の悪場入口(08:45)〜忌山の悪場、核心部8m滝(09:15)〜忌山の悪場6m滝(10:05)〜小屋跡(10:30)〜8m滝(11:55)〜3連の滝(12:35)~五平窪出会付近(13:30/14:00)~ヤケト尾根1,247m峰付近(14:50/15:00)~八丁橋先、天祖山登山道入口ゲート(16:55)

記録:日原川の崖地を縫う林道を車で慎重に走って、八丁橋先の天祖山登山道入口まで入る。登山道入口にあるゲートを越えて出発、左側ガードの切れ目、赤いペンキの塗られた箇所が日原川への降下ポイント。急降下する登山道を慎重に下り、日原川河原で遡行準備して、日原川を右岸へ渡って出発。

日原川右岸を歩いて程なく入渓地点に到達、緩い勾配の道を沢沿いに進むと、すぐに15mの大滝が現れる。

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直瀑の見事な滝は右側に高巻き、苔と岩、小石の沢床を20分ほど歩くと、忌山の悪場と呼ばれるゴルジュ帯に到達する。

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忌山の悪場のゴルジュ帯は、入口から直ぐ左に大きく折れ、滝が連続する。先ずは3m、3m、4mと次々に滝を越えていく。4mの滝は、右側を登るが、やや足場が悪く、つりしCLが安全確保のロープを出す。

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4mの滝を越えると、今日の核心部ともいうべき8mの滝が現れる。左壁を登っていくものの、なかなか足場の確保が難しい。一方、丁度良いところに残置(ハーケン4か所)があり。私も先行者の足場、手の置き場を注視して、見様見真似で何とか登る。

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8mの滝を過ぎても、忌山の悪場は、なおも3m以下の滝がゴルジュ帯の中に連続する。倒木が多いため、やや難儀する個所もあるが、清冽な水の流れる沢の遡行を楽しむ。

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そして、忌山の悪場は、ゴルジュ帯の出口近く、最後に6mの滝が現れる。シダや苔の生えた滝の左壁を慎重に直登して越える。

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忌山の悪場を抜けると、倒木の多い谷の遡行となる。倒木・小滝と越えていくと、大釜のある4m滝が現れる。4mの滝は、右側にへつりながら滝の釜左側に取り付き、水の落ち口に沿ってステップを刻みながら登っていく。(写真は、滝の水流をものともせず登っていくつりしCL。)

DSC08474

4m滝を抜け、左手に小屋跡を見遣りながら、倒木の多いエリアをさらに進むと、6mの滝に到達。流石に直登は難しく、右に取り付き、ややトラバース気味に滝の落ち口を目指して登り、滝を越えていく。

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6m滝を越えると、再び小さな滝がいくつも続く。倒木に悪戦苦闘しながら進むと、倒木に白いキノコが群生、なんと見事なウスヒラタケである。早速、ナイフを取りだし、切り取ってアズが自宅へお土産として持ち帰ることとなった。

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ウスヒラタケのあった小滝から先に進むと、沢筋は穏やかになってきた。私も、多少緊張が解けてきたが、最後に行く手を阻む8mの直滝が現れる。滝は、上部で2丈に分かれて直接滝壺に落ちている。水しぶきがミスト状に舞い上がり、滝壺近くは寒いくらいに涼しい。ホールド、スタンスがある右壁を登っていく。私も登るが、途中で足の置き場を見失って停止、周囲を見回し、いくつもの足の置き場になりそうなところをトライ、やっと見つけて、再び滝上を目指す。(途中残置ハーケン1か所あり)

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8m滝を越え、沢筋を足元に気を付けながら進むと、見事な3連の滝が現れる。丁度、日が差し込み、滝が輝いている。奥多摩にもこんな世界があるのかと、暫し見惚れる。

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綺麗な3連の滝を抜けると、再び小滝をいくつか越えていく。途中、真っ白なキクラゲを発見、野生のキクラゲを見るのは初めてであり、透き通った色合いはとても綺麗だ。

DSC08486

小滝が連続し、倒木の多いエリアをさらに進むと、左手に見事な10mのすだれ状になった滝が現れる。滝の先は、沢の傾斜は緩むものの倒木が重なるエリア、倒木は滑ったりザックが引っかかったりするので、慎重に越えていく。

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倒木エリアを抜けると小さな広場が現れ、ここで遡行終了。広場から先は、更に倒木が折り重なっている。広場で着替え、軽く休憩し、帰りは、1,200m付近左岸にある山道を示すテープ横から、右岸にあるヤケト尾根の尾根筋を目指す。

その山道は少し歩くとすぐに悪くなるので、今回1,247mの尾根筋に回り込むような感じで登り稜線に出た後下り山道に合流するコースを選択する。(写真は、広場左岸にあった吊橋への山道を示すテープ。)

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尾根筋へは、初め急こう配の足場が悪く所々ザレた斜面を登り、やがて、一転して、緩く広い尾根筋に乗る。広い尾根筋は、踏み跡が無く迷いやすい。現在地確認のためにGPSがあると安心。モミ・ブナの森は、静かで気持ち良い。緩やかで広い尾根を下り、やがて1,247m峰付近で一息入れる。

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1,247m峰から更に下ると、尾根は再び急こう配な斜面になる。途中、急斜面に見事なキノコを発見。ザレた急斜面を下って確かめるも、毒キノコであるツキヨタケ。

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気を取り直して、ザレた急斜面を戻り、トラバース気味に、急斜面に続く作業道を下っていく。滑落事故を起こしそうな急斜面をトラバースし続けるルートは、最後まで気を抜くことができない。滑れば、日原川の谷底まで滑落しかねないトラバースの道は、疲労が蓄積した状態でもあり、最後まで気の抜けない状況が続く。

DSC08511

やがて、つり橋が現れ、少し登り返せば、八丁橋へと続く林道に到達、あとは、林道を緑の木々を愛でながら、八丁橋に戻り、本日の山行は終了。

巳ノ戸谷は、滝の連続する沢の魅力に溢れる好ルートです。倒木が多く閉口する場面もありましたが、沢は2回目という私にとっては、奥多摩にこんな綺麗な滝があちこちに落ちる世界があるのかと、驚きながらの山行でした。

また、登攀技術、ロープワーク、歩き方等々、何れも大変に勉強になった一日でもありました。

この日は、寝坊の上、ヘルメットを忘れるという状況で、ご迷惑をおかけしてしまい、反省せずにはいられません。

この日は、お陰さまでとても楽しい一日となりました。

どうもありがとうございます。

 Minoto【 ルートGPS記録 (2016年7月3日、巳ノ戸谷) 】

越後三山

日程: 2016/7/8~7/9
メンバー: ミナトさん、サブさん、エビさん、セキザ(記)

記録:
当初は前夜発7/8~7/10で槍ヶ岳北鎌尾根の計画でしたが、天気が悪そうなので中止し急遽越後三山縦走の計画になりました。ただこちらも油断できない岩稜帯があるため、とりあえず上まで行ってみて、天気をみて決行するか下山するかを決めよう、ということで出発しました。

7/8 東京発07:00のMAXとき03号で越後湯沢へ、北越急行に乗り換え08:34に六日町駅着。09:30のバスに乗り八海山スキー場へ。(一本遅い新幹線だと09:29に六日町に着くが、電車とバスの接続はおこなっておらず、一時間近く待った。)バス運賃は420円だが、ザックが40リットル以上だと別途100円の荷物料金がかかった。スキー場の山麓駅からロープウェイで一気に4合目(1147m)まで行く。20分毎の運行で、片道1000円だった。
10:15登山開始。樹林帯で直射日光こそないが、湿気と風がないためかなり蒸し暑かった。6合目手前に胎内くぐりという洞窟があった。エビさんだけここを抜け生まれ変わる。(性格がさらに良くなったそうです。)

①胎内くぐり.jpeg

途中何箇所か梯子や鎖があったが特に問題ない感じでした。12:10に8合目に到着。②8合目.jpeg③八合目から越後駒方面その①.jpeg④8合目から越後駒方面その②.jpeg⑤入道岳西面のスラブ.jpeg

5分ほど歩いて9合目の千本檜避難小屋着。夕方からの天候があやしいので本日はここまで。受付を済ませ水を汲もうと思うも予想外の出来事が。なんと最近の豪雨?で近くの水場の水質が悪化し、小屋の水は天水かペットボトルの販売のみだそうです。最新のエアリアには水マークついているので注意が必要です!
結局6合目の少し上にある水場まで水汲みにもどりました。翌日の天気も悪いと思われるので、小屋に重荷をデポし軽身で八海山のうち5つ(不動岳~釈迦岳)を登りました。鎖があるとはいえ、岩稜帯に不慣れな自分にとってはちょっとしたスリル体験で楽しめました。

⑥八海山.jpeg⑦八海山集合写真.jpeg
夜はサブさんの大根サラダと豚生姜焼きと五目御飯おいしくいただきました。しかし夕食後○○さんがウイスキー飲みながらひたすら五目御飯2人前を食べ続け、さらに就寝直前になにかをボリボリ食べていたことに残りの3人は言葉が出ませんでした。翌日の天気予報は降水確率70%。

7/9 3:00起床。天気は朝から雨。天気予報も悪いし回復の兆しもないので、元来た道を06:00下山開始。08:00のロープウェイに乗って降りました。

最後にご一緒した皆様、リーダー急な計画変更大変なところありがとうございました。越後の山は初めてでしたが、いいところでした。いつか縦走したいと思いました。スラブもかっこよかった・・・。

奥多摩 長沢背稜

日程: 6/26(日)~28(火)

メンバー: セキザ

記録:

6/26 朝仕事が終わりそのまま東京駅発10:23の青梅特快に乗り奥多摩駅へ。12:27の丹波行きのバスに乗り換え、13:40ころ鴨沢登山口から登山開始。日差しが強かったり雲が出たりだが蒸し暑い。七つ石を巻く場合唯一ある水場は、前日雨天だったせいか?豊富に出ていました。なるべく汗はかきたくないし、奥多摩小屋までの予定なのでのんびりゆっくり歩く。16:20ころ奥多摩小屋に到着。日曜日だからか、テントは自分を含め4張り(貸し切りも期待したが・・・)で、静かなテン場を満喫できるかな・・・と思ったが、蚊とブヨがすごい!もがき格闘しながらやっとの思いでテント設営する。虫よけもってくればよかった・・・焚き火の力は偉大だなあと思う。なんだかんだ汗をかいてしまったので最近買ったファイントラックのナノタオル(3000円くらいした)を濡らして身体を拭く。超細かい繊維で身体の垢などをごっそりとってくれる使えるヤツで、拭いた後下山用兼パジャマ用の綿のTシャツに着替えたらサラサラですごく快適だった。広げると手ぬぐいくらいだがたたむとピンポン玉+αくらいのサイズになるのでとても良い買い物をした。
ここのテン場はシカが多いが、この日はとくに元気で、たくさん出てきて鬱陶しかった・・・。夜テントから出たら目の前にいて、びっくりしてものすごい勢いで逃げて行ったが、こちらもびっくりしてしまうのでやめてほしい。夜はこれも最近買ったテント用の小さいランタンを灯し読書。ヘッデンだけでも十分だがなんとなく贅沢な感じがして快適だった。この日は仕事終わりからの登山だったため、21:00くらいに就寝。

長沢①.jpeg

6/27 天気は曇り。今日は一杯水避難小屋までの予定。08:40にテン場を出発。一杯水避難小屋の水場は涸れることがあるらしいのと、来月の北鎌尾根の足慣らしも兼ねて雲取山荘で4リットル水を補給する。芋の木ドッケの手前からは長沢背稜のコースになる。三峰神社の方面なら何度か行ったことがあるが、ここからは初めてなので楽しみだ。あまり人は入らないイメージがあったが、道は明瞭で標識もたくさんあった。途中3人ほどすれ違ったが静かでいいところでした。酉谷避難小屋にちょろっと寄ったが小さくてきれいだった。水場は涸れなそうな感じ。15:00すぎに一杯水避難小屋着。この日は避難小屋に貸切で泊る。水場は蕎麦粒方面に5分ほど進むとあるが、普通に水出てました。小屋に置いてある日記帳によると、涸れているように見えるのは水場の管の上部に落ち葉が詰まっているからで、ほとんどの場合はこれを除けば解決するそうです。
2日前にホラー漫画を読んだせいで、1人の避難小屋は気味悪かったため、読みかけの本を片付けて早めに寝る。

6/28 天気は朝から雨。蕎麦粒~川苔を経て鳩ノ巣駅へ下山。展望はなかったが、静かなブナの山は雨の方がむしろ雰囲気が出て良かった。

読んだ本:洞窟おじさん

湯檜曽川東黒沢~宝川ウツボギ沢

○期日:2016年7月9日〜10日

○メンバー:コバ(CL)、みどり、トヨタ、ハギ(記)

○行程:

9日…白毛門登山口(8:50)〜白毛門沢出合(9:45)〜1040二俣(11:40)〜丸山乗越(12:55)〜ウツボギ沢出合(14:05)〜幕場(14:30)

10日…幕場(7:00)〜右俣出合(7:55)〜1520二俣(10:25)〜笠ヶ岳下鞍部(11:15)〜白毛門山頂(12:00/12:25)〜白毛門登山口(14:55)

○記録:

【9日】

分かっていた。分かっていたけど、雨だといまいち気分は乗らない。夕方から回復して明日は晴天との天気予報にみんなで気持ちを盛り上げて出発、白毛門登山口右側の道を歩き堰堤上から入渓。

雨だけども、白い岩盤はやっぱり綺麗だ。ああ、晴れてればなぁという言葉を道すがら幾度となく吐き出すことになった。

出発から30分でハナゲの滝。2箇所、明瞭な巻きの入り口があり、今回は上側の入り口から巻いた。少し歩くと白毛門沢出合。

ハナゲノ滝

以降ナメ床とナメ滝の繰り返しになり、晴れてればなぁ、晴れてればなぁと唱えながらも雨の中楽しく遡行。東黒沢は数年前に来たことがあるが、こんなに綺麗な沢だったけか。小滝もでてくるがどれも簡単に登れる。

ワンシーズン分のナメを半日で歩いたんじゃないかと思うほど、ナメにすっかり毒気を抜かれてしまった。やっとこ水がちょろちょろになり、スカイラインが低くなってくる。最後の二俣状から一度踏み跡ぽい所へ入って行くが、あまりはっきりしなかったので、コバLの取った右の沢型を忠実に詰めた後に踏み跡をたどる方が正解だったか。ともあれ薄い薮なので苦労することはない。先行したコバさんの笛を追うとすぐに平らな所に出て(丸山乗越)、北へ方角を定めて緩やかにくだれば、またすぐに小さな小さな窪に出会う。ほどなく小沢になり、ウツボギ沢の枝沢に合流した。何箇所か後ろ向きで降りるところはあったが、問題なし。

1時間ほどでウツボギ沢に出て、幕場を探して30分ほど付近をウロウロする。広河原は4人並んで寝れるサイズのタープをテンションかけて張れるほどしっかりした木がなくて却下。宝川の対岸まで見に行ったが、結局、水面からの高さはあまりないが、快適そうなウツボギ沢の河原に張ることにした。

話に聞くとおり周辺には薪が少ない。宝川まで遠征したり、広河原に残されたものを頂いたりして、なんとか集まった。濡れた薪からの着火にチャレンジしてみたが、やっぱり私には難しく、そしてきっと根気も足りなかった。

雨の中出掛けたコバさんが岩魚をゲット。ミズとフキ、ヒラタケちょっぴり、それらを平らげ、焼鳥、カレーとなるころにはお腹も一杯。ごちそうさまでした。ツエルトを持ってきていたが、全員タープの下で寝た。

夕餉

 

【10日】

昨日の夕方に止むはずの雨は結局、朝までダラダラとしつこく残っていた。

しばらく穏やかな沢歩き。ウツボギ沢の最大15mくの字滝は右から巻く。一段上がり、右から入る枝沢の端を登り、途中から薮に入りトラバースすると、滝上すぐの所にすんなりと導かれる踏み跡がついている。

くの字滝の途中

この滝の上はぐっと空が広くなり気持ちがよい。

このへんでようやく完全に上がったらしい雨に暑苦しい雨具を脱ぎサッパリ、注がれはじめた日差しにさらに気をよくした。

ナメ、ナメ滝、ナメ、小滝、という渓相がこれでもかと続いていく。大分沢幅も狭くなってきたなと思うと、向こうに美しい小滝が現れる(沢幅に対して結構立派)、の繰り返しで、「まだ続くの!」とみんな嬉しい悲鳴。

 

1520の二俣は左、そのあとは沢型を水のある方へと忠実に詰めていく。水はかなりの所までなかなか枯れなかった。

笹が被さったトンネル状の窪のどん詰まりから一段あがり、すぐそこの稜線を目指す。なんとなく跡ができているので軽くかき分けるだけで簡単に前に進み、頭が笹の上に出てからは右手には笠ヶ岳から下ってくる登山道が見えるようになり、方角も間違えようがない薮漕ぎ1級。ふりかえれば皆もにこにこ楽しそう。窪から上がって10分もしないうちに、ちょうど笠ヶ岳から下りきった鞍部に出た。

 

そのままのんびり歩を進め、一の倉沢のビュースポットではあそこが○稜で△稜でというトヨタさんとコバさんの会話についていけず首をかしげ、沢山の人でにぎわう白毛門でのんびり装備を片す(のんびりしすぎて気がついたらみんなパッキング完了していた。ごめんなさい)。白毛門の下山は…やっぱりうんざり。ピストンでハイキングの人が大半のようだったが、こちらは片道でお腹一杯である。みどりさん曰く「午前中の綺麗な沢の記憶が薄れちゃった」、本当に本当にその通りだ。

…でも、思い起こせばやっぱり綺麗な癒し沢でした。

 

〈メモ〉

コバさんはアクアステルスで難なくだったが、全体的にはぬめっている所が多いような感じはしたので、慣れてない人ならフェルト靴使用が無難だと思う。