赤岳県界尾根

●日程:平成26年3月29日~3月30日

●メンバー:笹田・サブ・かおり(記)

●記録

3月29日 晴天 ☀ (サンメドウ清里スキー場~大天狗)
朝一のあずさで新宿を出発。半袖でも大丈夫なくらい暖かい陽気だ。9時半ごろサンメドウ清里スキー場に到着。あまりの暖かさに冬用のインナーを駐車場で脱ぐ。
10時出発と順調なスタートをきった。
 人があまり入って居ないのと、ここ数日の暖かい気温で雪解けが進んだので足が取られる。
沢沿いの道を進む。1100少し前頃に休憩を取る。
県界尾根の標識付近で、腿まで沈む春の重たい雪にワカンを装着。
さほど歩かないうちに、急登になりワカンを脱ぐ。
木や草につかまり登る。
途中凍った足元に冷や汗をかきながら、地図通り直角にまがり尾根に上がる。暖かく、夏道の土が露出していて、鹿糞まみれの道をのんきにおしゃべりしながら歩いた。
しばらくするとまた足を取られる。雪がかなり腐っていてわかんをつけてワッシャワッシャと進む。
地図通りだとコーナー部分が小天狗だが、1時間半ほど歩いたところに小天狗の標識があり、衝撃を受ける。そろそろ大天狗だと思っていた浅はかな私は、精神的ダメージから立ち直るのにしばらく掛かる。ベテラン笹田氏・鉄人サブ氏も同様にブーイングが出ていたので、それぞれに少なからずダメージを受けたのだろう。私だけじゃ無かった・・・・・・ほっ。

小天狗の位置が…
小天狗の位置が…

天気がよく富士山・赤岳の眺めは最高である。
相変わらず雪が腐っていて、木の周りなどは背丈が埋まるほど落ちてしまう。恐る恐る1歩を進める状態で、途中からは10分交代でラッセル。
私は、大天狗までの最後の歩きは、ヘトヘトで一歩を踏み出すのが辛かった。先行する2人は疲れを見せず、ラッセルしてくれる。流石だ。
4時半近くにやっと大天狗に到着する。広く平らな大天狗で本日幕営。
体力・時間があるなら本日中にピストンする予定であったが、時間(私は気力と体力も)の為、予定通り幕営。

素晴らしい幕営場所
素晴らしい幕営場所

快適なテン場に気分を良くし、笹田氏奥方様お手製のケーキで乾杯。宴会後就寝。
夜半より雨・風が強くなり、私・サブちゃんは爆睡していたが笹田氏はテントの張綱をなおしてくれたようだ。いつもすいません、ソコツな女共で。

3月30日 みぞれ→雨→わりと土砂降り ☂  (大天狗~サンメドウ清里スキー場)
300起床
天候がかなり悪く、気圧が急激に下がっている。樹木に守られているせいかテントへの影響は無いが雨足も風も強い。
ゆっくりと朝食を取りながら、気圧の変化を見て行動を決めようと言う事になり、天候とは逆に優雅に朝食。5時頃でも天候の回復が見込めないのと、悪天予報だった事もあり、下山宣告。
毎度天気が悪くなかなか頂上を踏めない赤岳だが、悪天での登攀をせずに下山することに胸をなでおろし、英断をしてくれた隊長に感謝。
620 天場出発 吹雪いている山の、地面と空との境界があやふやな景色が美しい。
ワカンを装着して登ってきたときに出来たトレースを下る。
954 登山口到着。終始わかんを装着しての登山であった。雨で全身濡れている。笹田氏はパンツまで濡れていたようで、寄った温泉でパンツを購入していた。
サンメドウスキー場カラマツロッジで地元の皆様が子供スキー教室に使っている集会場にお邪魔させて頂き、濡れた装備を外す。
親切な奥様方に『この天気でも行くのだから山が好きなのね~』と呆れられながら、タクシーを待つ。今シーズン最後のスキー教室の子どもたちに紛れながら、暖房の効いた暖かい部屋に入れてくれた事に本当に感謝。

悪天候の為、頂上を踏むことは出来なかったが、色々な面で大変勉強になる山行であった。
体力・気力・判断力、そして首まで雪に埋まっても決して折れない精神力が必要!と学んだ。
最後に、いつもピヨピヨ組を優しく指導してくれる笹田師匠・楽しくて頼れる隊長サブちゃん本当にありがとうございました。春のラッセルは辛いけど、また行きたいね県界尾根!

~笹田さん記録~

早春の県界尾根    笹田記

 

春は梢に、咲くかと待ちし

花を尋ねて、山廻り

秋はさやけき、影を尋ねて

 月見る方にと、山廻り

冬は冴え行く、時雨の雲の

 雪を誘いて、山廻り

  ・・・・  「山姥」より

この一年苦楽をともにした友との年度末の山旅。
企画してくれた心強い高橋嬢と、笑み絶えぬ長谷川嬢に感謝。
騒がしい西面に比して我々だけの東面の八ヶ岳県界尾根は、鹿の鳴き声と雪から頭を出す数個の苔むした石塔だけ。
思わぬラッセルにワカンを履いて辿り着いた大天狗のテント場は、木々に囲まれた雪の原で憩いの休息地であった。
夜半からの風雨も明け方には雪に変わり、登頂までの吹き曝しとなる核心部を考慮してリーダーは下山を告げる。
下りは雨対策の完全装備で未知への登攀から開放され、つのる風雨も意に介せず笑いが絶えない。

思えば彼女達とは春の穂高岳、盛夏のこれまた穂高連峰の岩登り、秋には岩の殿堂剣岳、冬は八ヶ岳の天狗尾根と記憶に残るこの一年の山廻りであった。
そんなことを振り返りながら、腐った雪に足をとられよろぼいながら登山口のスキー場に下山した。
一風呂浴びて卓を囲み飲む一杯の生ビールは、苦味より甘みが勝る山の神の贈りもの。